第12回エルスール財団新人賞決定!

第12回エルスール財団新人賞のコンテンポラリーダンス部門とフラメンコ部門の受賞者が下記のとおり決定いたしました。
なお、現代詩部門のみ11月中旬以降に発表予定です。

現在当財団HPはリニューアル中のため、過去の受賞者につきましては旧HPをご覧ください。
現在のHPから飛ぶこともできます。
https://elsurfoundation.com/old/shou.html

第12回エルスール財団新人賞
コンテンポラリーダンス部門受賞者
黒須育海(くろすいくみ)

(Photo by hitoha.nasu)

<贈賞理由>
 黒須育海は人気ダンスカンパニーのコンドルズの「踊れる若手メンバー」として活躍しつつ、自ら主宰するダンスカンパニー「ブッシュマン」を結成。2020年に横浜ダンスコレクションEXで最高賞を獲得した。
 もっとも当初は、男性中心のダンサーがパンツ一丁でガンガン踊る、という野性味が中心の作風だった。
 しかし『けむりでできたぞう』(2020)のあたりから、明確なテーマと、美術を含めた空間の使い方、展開する構成力で、作品世界が格段に分厚くなった。それらは明らかに意図して質を高めていったのだと思う。カフカの『変身』に挑んだ『触覚時代』(2022)における最後の慰撫するようなダンスは、グレゴールの死を悲しみつつ安堵する原作の家族の様子と見事に重なるまでになっていた。近作の『羊羊羊羊羊祥羊』(2023)ではクローン技術で「生まれてきてしまった側の悲哀」を描き注目を集めた。
 強い身体性を保ちながら、総合芸術としてのダンス作品に挑む。今後のますますの挑戦と成長を期待している存在なのである。
(選考委員:乗越たかお)

<プロフィール>
黒須育海
ブッシュマン主宰。2018年にコンドルズ参戦。
舞台芸術の多様性の追求を目的とし、身体性にこだわり、ダンサーの異形な身体を探求する独自の世界観で話題に。東京芸術劇場シアターウエストでの公演他、各地で公演を行い、韓国、香港、ハンガリー、ルーマニア、マレーシアなどに招聘される。
横浜ダンスコレクションEX2015にて、シビウ国際演劇祭賞、Touchpoint Art Foundation賞受賞。
横浜ダンスコレクション2017にて審査員賞受賞。
2020年には第14回日本ダンスフォーラム賞を受賞。
代表作『けむりでできたぞう』『FLESH CUB』『触覚時代』『羊羊羊羊羊祥羊』

酸欠少女さユりMVや女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」の振付なども手がける。
肢体不自由部門の特別支援学校に10年間務めた実績を投入し、舞台活動のみならず、障害を持った方、子供、高齢者に向けてワークショップを開催してコンテンポラリーダンスを社会に拡げるよう取り組んでいる。現在は大学で非常勤講師を務める。

第12回エルスール財団新人賞
フラメンコ部門受賞者
鈴木時丹(すずきじたん)

(Photo by Shigeto Imura)

<贈賞理由>
 バイラオール鈴木時丹さんの登場は、日本のフラメンコ界にとって、まぎれもなく大きく、嬉しいニュースに違いない。父親の鈴木尚氏はギタリストで、母親の大塚友美氏はバイラオーラ。そうしたご両親のDNAを受け継いだ鈴木時丹さんは、ここ数年「原石」として静かに輝き続けていた。
 ヒターノのアルティスタ同様、常にフラメンコが身近にある環境で育った鈴木さんは、踊りはもちろんのこと、ギターを弾き、歌を歌い、パルマもする。そして、それらすべてが、彼のフラメンコの世界を形成している。
 鈴木さんの、昨年から今年にかけての急激な進化には目を見張った。タブラオ「エスペランサ」の「Jovenes promesas~希望ある若者たち~」シリーズへのレギュラー出演、各タブラオへの出演、劇場公演へのゲスト出演など……、毎回驚かされた。また、パルメロ、バイラオールとして参加している徳永兄弟の全国ツアーでも、持ち前のリズム感とフラメンコ性で、公演を大いに盛り上げていると感じた。
 それでは、鈴木さんの踊りの魅力はどこにあるのだろうか? もの静かで穏やかな外見からは想像もできないような、集中と爆発。まるで、ヒターノのバイラオールの踊りを見ているような気分にさせられる瞬間がある。そしてそのギャップに軽い眩暈さえ感じていると、最後には一つの「作品」として締めくくるのだ。これには、うならされた。
 冷静でありながら、熱量を感じさせる踊りは、今後ますます日本のフラメンコ界を盛り上げていってくれることだろう。期待を持って見守りたい。
(選考委員:野村眞里子)

<プロフィール>
鈴木時丹
フラメンコ舞踊家
静岡県浜松市出身
幼少期より舞踊家大塚友美(母)とギターリスト鈴木尚(父)の影響でフラメンコに触れる。
高校卒業後に渡西し、主にEl Torombo やPepe Torres らのもとでフラメンコの美学を学ぶと同時に、ヒターノ(ジプシー)たちの芸や生き様に魅了される。
その後上京し、タブラオ高円寺エスペランサにてJovenes promesasのレギュラーメンバーとして出演。また、フラメンコギターデュオ徳永兄弟のパルメーロ、踊り手として帯同。
その他多数のライブハウスにて活動。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次