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アトリエ・エルスールからエルスール財団へ 詩とダンスのために いま、新たなページが始まる

インタビュー

〜アントニオ・ナハーロ氏に聞く〜

2013年2月6日(水)、東京は雪。2011年、35歳の若さでスペイン国立バレエ団の芸術監督に就任したアントニオ・ナハーロ氏に、来日公演の合間を縫ってインタビューをさせていただいた。(インタビュアー:野村眞里子、通訳:志風恭子、撮影:渡辺亨)


野村:ナハーロさんは、2011年にスペイン国立バレエ団の芸術監督に35歳の若さで就任されました。この時まず感じたことはどのようなことでしたか? 何かプレッシャーのようなものはありましたか?

ナハーロ:国立バレエ団の監督に決まったというニュースを受け取った時、私は自分のカンパニーを9年に渡って率いていました。ですから、本当に国立バレエ団の監督になるという話がきた時、一方では寂しい気持ちにもなりましたね。私の舞踊団はうまく機能して、世界中で公演を重ねていましたから。コンパクトなカンパニーで、世界中にスペイン舞踊を届けていたのです。もちろん、私がプロジェクトをつくり、国立バレエ団のディレクターに応募したのですが、本当にその時がくると、自分のカンパニーをやめてしまうことを怖いとも思ったのです。でも、35歳でスペイン国立バレエを監督できるということは私の人生にとってもとても重要なことですし、喜んでお受けしたのです。





野村:今回Aプロでは、あなたの振付による「セビリア組曲」が日本で初演されました。私も土曜日に拝見し、たいへん感動いたしました。9つのシーンのアイデアはどのようにして生まれ、またどのような過程を経て完成したのですか? また、あなたご自身の舞踊団で「セビリア組曲」を上演された時と、スペイン国立バレエ団で上演する場合の違いはどこにありますか?

ナハーロ:ギタリスト、ラファエル・リケーニの作品「セビリア組曲」、これは2台のギターのための作品なのですが、これを聴いた時にスペイン舞踊でこの作品を、というアイデアが浮かんだのです。私はよくセビリアの町を知っていますし、この町をスペイン舞踊の異なったスタイルを使って描いてみたいと思ったのです。エスクエラ・ボレーラ、クラシコ、フラメンコ、とね。それで10人のミュージシャンによるバージョンを考えました。私が聴いたのはギター2台のものだったのですが、その曲を10人のミュージシャンでやるというのも非常に面白いと思って、自分のカンパニーのために作ったのです。そして芸術監督になった時、スペイン国立バレエ団のメンバーでも上演しようと決めたのです。





野村:違いは?

ナハーロ:スペイン国立バレエ団には、沢山のダンサーがいます。私の振付家としての特徴に群舞があります。スペイン国立バレエ団ではこの作品を沢山のダンサーで、24人も使って上演することができました。





野村:同じ振付けをより沢山の人で踊っているのですね。

ナハーロ:そうです。倍くらいですね。





野村:芸術監督就任後、2年間はご自身が踊らないという決意をされたそうですね。今年はその2年目が満了します。そこで、期待を持ってうかがうのですが、あなたが舞台で踊られる予定はありますか? たとえば、「セビリア組曲」の闘牛士を踊られる可能性はありますか?

ナハーロ:ええ。今は踊りたくてしかたありません。6月にソロージャの作品をテーマにした作品を初演しますが、その次の作品ではおそらく踊る事ができるでしょう。





野村:あなたは、フィギュアスケートの振付も数多くなさっています。ソルトレイク・オリンピックでは、アイス・ダンスのアニシナ&ペイゼラ組に振付け、彼らは金メダルをとりました。また、ステファン・ランビエールの「ポエタ」では、世界中のフィギュアスケート・ファンを感動の渦に巻き込みました。

ナハーロ:ええ、今もスケーターたちから振付け依頼の電話がかかってきます。できる時、時間がある時に行っています。去年も9月に来日し、『ファンタジーオンアイス』の振付けをしました。時間ができればね、今は国立バレエ団の監督で前のように時間はないのですが。フィギュアの振付けは好きですしね。





野村:フィギュアスケートの振付のことでも、もう一つおうかがいいたします。来年はソチ・オリンピックが行われますが、このオリンピック・シーズンのプログラムの振付をなさる予定はありますか?

ナハーロ:ええ、おそらく。日本のスケーターにもぜひ振り付けたいと思っています。エネルギーに溢れていて、規律正しく、表現力も豊かですしね。





野村:それでは、最後にあなたの新しい振付作品についてうかがいます。あなたは、ソロージャの絵がお好きで、今彼の絵からインスパイアされた作品をご用意されていると聞きましたが、どのようなものになりそうですか?

ナハーロ:ソロージャの作品は大好きです。光と輝きにあふれています。ドラマチックというよりもすごく生き生きしていて。私は振付家として、踊り手たちの輝きを引き出す、というのを得意としているのですが、ソロージャもそうなんです。また「スペインのビシオン」というソロージャの作品と出会いました。14枚の絵からなるこの作品は、ニューヨークのイスパニックソサエティの依頼で制作されたもので、スペインの北から南まで各地の情景を描いたものなのです。私たちの国のあらゆる舞踊を表現するのに最適だと思ったのです。




野村:いつ頃どこで発表なさいますか?

ナハーロ:マドリードのマタデーロ劇場で6月、初演します。





野村:ありがとうございました。それではますますのご活躍をお祈りいたします。

※なお、ナハーロ氏が言及された新作『ソロージャ』は予定通りマドリードで上演され、大成功を収めた。





○○○○○○○○イメージ

アントニオ・ナハーロ(フラメンコ舞踊家/振付家)


1975年マドリード生まれ。15歳でプロとしてのキャリアをスタートさせ、いくつもの舞踊団で活躍ののち、97年にスペイン国立バレエ団へ入団。3年後には第一舞踊手に昇格した。クリエーターとしての資質により、早くから振付も始め、2002年には自らの舞踊団を結成。2011年までの間4つの作品を発表している。2011年、スペイン国立バレエ団の芸術監督に就任。




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