小谷野宏司
Hiroshi Koyano
<贈賞理由>
小谷野さんの踊りはもうだいぶ前から拝見しているが、その圧倒的な個性は他の追随を許さないほどだ。プーロなフラメンコを愛し、頑固に、こだわりを持って生きている人だが、人懐っこさと温かい心を持ち、多くの仲間やアフィシオナードに愛されている。そして、たとえ自分と相容れないタイプのフラメンコを仕事で要求されても、「勉強」として真面目に取り組もうとする姿勢も持ち合わせている。
当初、私はバイラオールとしての小谷野さんしか知らなかったが、2019年にルイス・ペーニャのフィエスタが目黒のラテン文化サロン内「カフェ・イ・リブロス」で開かれた時、フェステーロとして「タンゴ」を歌って踊った小谷野さんを見て驚いた。セビージャの古きよき時代のフエルガの雰囲気をかもし出していたからだ。後からご本人に聞いた話では、「ブレリアは前にもやったことがあったけれど、あの時突然ルイスに『タンゴをやれ』と言われて初めてやった」のだとか。つまり、私は小谷野さんのフェステーロとしての初タンゴを目撃したというわけだ。
あれから3年、小谷野さんはバイラオールの忙しい仕事の中ですら着実に研鑽を積み、フェステーロの道も歩もうとしている。その歌と踊りは、本場セビージャでもすでに知られ、愛されているというから驚きだ。
バイラオールにしてフェステーロ、小谷野宏司さんのますますの成長と活躍を願って、第1回エルスール財団特別賞「プレミオ・アルマ・プーラ」をお贈りしたいと思う。
選考委員:野村眞里子